ちば里山・バイオマス協議会(ちば協)

9月27日「勝浦の循環型社会転換を考えるシンポジウム」の報告

ちば里山・バイオマス協議会は、9月27日(日)午後、「勝浦の循環型社会転換を考えるシンポジウム SDGs達成に向けて、勝浦を循環型社会へ転換しよう 〜官民連携で低炭素な廃棄物処理を実現! 迷惑資源の竹や未利用バイオマスもリサイクル」を開催しました。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
シンポジウムは、千葉県の令和2年度ボランティア参加促進事業として実施したものです。会場の勝浦市芸術文化交流センター(キュステ)大会議室には、勝浦市と周辺市町村から50名の参加者が集まり、講演とディスカッションが行われました。
ちば里山・バイオマス協議会(ちば協)代表幹事の高澤真の司会により、主催の千葉県環境生活部県民生活・文化課の今井典史副課長から開会挨拶がありました。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
続いて、勝浦市の土屋元(はじめ)市長から来賓挨拶がありました。土屋市長は、「農林水産は繋がっている。クリーンセンター(ごみ処理場)の更新期となり、循環型社会形成のシンポジウムを開催することになった。外房地域の未来に明るい光が入ることを祈念する」とお話しされました。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
また、御宿町の石田義廣町長から、「畠山重篤氏をお招きして森は海の恋人シンポジウムを御宿町で開いたご縁で参加している。今日は地球温暖化対策という大きなテーマで大変興味深い。地域経済活性化のきっかけとなるよう期待している」と来賓挨拶がありました。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
第1部は講演でした。はじめに、バイオマス産業社会ネットワーク副理事長、NPO法人農都会議アドバイザーの竹林征雄氏より、「循環型社会と廃棄物循環利用」のテーマで講演が行われました。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
竹林氏は、人間の活動と世界の変化、公共事業の変化(人口減→高齢者増加→エネルギー問題→地球温暖化→災害・経済縮小→公共サービスの官民共同運営)、人口減で廃棄物行政の変化(縮むゴミ焼却炉と下水道、処理から利活用へ、循環型経済へ)、地域が豊かであり続けるための新しいビジョン=廃棄物問題はハード、ソフト含めたまちづくりそのもの=スマート(賢い)なまちづくり、小規模自律分散型のゴミ循環資源化施設を活用した循環型のまちづくり、直線型経済から循環型経済へサーキュラーエコノミー(CE、物とお金の循環)、包括的な資源循環の事例とバイオガス施設などについてお話しされました。
また、全世界の共通の課題はSDGsと循環資源と森林資源のCEによる事業化と地域循環経済、自信をもって地域特性に応じた持続可能ご当地社会像を、ゼロカーボン社会を目指しSDGsを達成し環境・社会・経済統合の新地域社会創造を、と述べられました。
 
続いて、一般社団法人国土政策研究会理事、公民連携定住対策推進自治体連絡会事務局長の伊庭良知氏より、「公民連携によるまちづくり・公共事業・公有資産活用 新しいスキームによる公共発注最近のPPP・PFIの発注動向」のテーマで講演が行われました。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
伊庭氏は、公民連携(PPP・PFI)とは?なぜ自治体はPFI発注するのか、自治体の事業の進め方、国の取り組み方針、成長戦略に記載の国交省関連PPP・PFI、大切なキーワードと行政の姿勢、最近のPFI事業一覧、国による地方自治体の誘導施策などについて説明されました。
また、「国と自治体は一体となってPPP・PFIの更なる推進の必要がある」と背景に書かれている、自治体・地方企業・地域金融機関のプラットフォームへ参画推進すべし、入札制度改革、公民連携制度改革、新しいPFIの形の例などが考えるべき分野、PFIの特徴は企業・NPOなど民間がグループで応募できる公的資金を活用できること、公共事業をPPP・PFIでやると満額や上積みがあるなどとお話しされ、自治体負担「0」を目指すPPP・PFI事業について紹介されました。
 
最後に、一般社団法人日本有機資源協会専務理事の柚山義人氏より、「バイオマス利活用が一翼を担う循環型地域社会の共創」のテーマで講演が行われました。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
柚山氏は、本日の目標は(房総地域を念頭において)多くの主体がかかわりながら地域資源をフル活用して魅力的な循環型社会を共創するための手段やプロセスについて見識を深めること、農山魚村には豊かで魅力的な風景、風土、食、暮らし、情感、文化があり、人は人的資源、地域情報(伝承)、伝統行事、芸能、慣習も広義の地域資源、とお話しされました。
また、どんな勝浦をつくるのか?スマートビレッジとは?バイオマス利活用システムとは?と問いかけされ、バイオマス利活用で勝浦を循環型地域社会への例、竹の利用、市民・事業者・行政の役割、SWOT分析と演習(地域診断で現状を知り利活用案を比較、物質・エネルギーフローの理解、どこからどのくらいCO2、CH4、N2Oが出ているかを推定、施策の効果を予測)などについて説明されました。
さらに、勝浦の潜在力は地域資源、何よりマンパワー、市民力を生かす取り組みをしてほしい、勝浦の人々の身近な実践が大きな力となる、軸となるビジョンを皆で共有してほしいと述べられました。
 
第2部は、「ボランティア活動について、課題解決への市民・事業者・行政の役割について」のテーマでディスカッションが行われました。司会・進行は勝浦市市議会議員、ちば里山・バイオマス協議会幹事の鈴木克己氏でした。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
第2部の前半は、ボランティア活動の紹介と、それについての意見交換がありました。
1.NPO法人ワンパース 池田豪代表より
東京から8年ほど前に、大多喜、東金を経て勝浦の赤羽根に在住。耕作放棄地の問題も勉強しながら、自然の中で動物と人がそれぞれハッピーに暮らせる社会を作れるか、このことを子供たちに伝えるためのイベント活動などをしながら、勝浦の素晴らしい資源を生かしていけるか等を考え活動している。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
2.いすみ薪ネットワーク 伊藤幹雄代表より
当会は薪ストーブを使う人たちで構成している団体で、登録メンバーは約150人いる。いすみ市内が8割で、その他周辺地域の方々。世代は幅広く30~40代がメインで次が50~60代、活動量は70代が一番多い感じ。薪ストーブを軸に地域コミュニティができているのがこの団体のユニークなところの一つ。地域の薪資源は計算したら200年たっても使いきれない。いすみ市は薪ストーブ購入者へ20万円補助がある。地域ではこれまで当たり前だった薪を使うことによって今の生活の質を高める活動をしていきたい。
 
3.竹姫 刈込正代表より
当会は竹パウダーを作り土壌改良剤として農地に活用している。5年ほど前から田んぼに入れて、できた米はJAの食味コンクールで勝浦市長賞をもらった。コメのブランド名は「竹姫」。竹パウダーは肥料にはならないが土地の改良には最適。
プライムブルーという林業の会社の代表でもある。千葉県の認定事業体であり特殊伐採も行っている。「森を守って海をきれいに」が会社の方針。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
ディスカッションの後半は、本日の「勝浦の循環型社会転換を考えるシンポジウム」について質疑と意見交換を行いました。
市の清掃センター施設が老朽化している。将来直す場合に生ごみは資源だという考えでやっていただきたい。道の駅計画はだめになったが、これに代わるもの造るとき、公民連携で対応してもらいたい。
その時は清掃センターの名前を変えたら良い。ごみ処理場は発電所になる。熱を利用した施設、老人施設(お風呂)などを併設した新しい形の廃棄物処理場で廃棄物をゼロに持っていき、効率的な施設とする。
道の駅とホテル、ツーリングとつなぐ。街の顔としたゲートウェイとして造っていく。子供の遊び場。様々な形態が検討されている。公民連携で、公の役割、民の役割を明確化し道の駅を進めるのが良い。
地域のボランティアの方の活躍が必要と思う。ボランティア活動は敷居が高と思われがちだが、身近な小さな社会貢献もつながると思う。
PFI事業の特徴は民間企業がグループを作って統合していく。包括的な仕事なので1社でできることは少なくグループ企業に、NPOやボランティア団体が入って、地元の方が参画し住宅地域ならコミュニティ形成を手伝うとか、図書館とか公民館の運営をやる。ボランティア団体に対しても事業に参画と言うことでお金も出るので、NPOや団体の経営にもなる。
勝浦にあるバイオマス関連で、薪ストーブを使うとか、学校の机に木材を使うとかが循環型となるのか。
勝浦の森林は市面積の61%を占めている。日本の平均は67%ある。木(容量)は年々増加するので、増加分は使った方がよい。木はCO2貯留になる。
群馬県上野村では、木を使ったエネルギー化を推進している。50kWのバイオマス発電所をからの熱を利用しキノコセンターで使う。防災にも使えるし、道の駅の冷暖房と電気を供給。木を、チップとペレットにし温浴施設のボイラー燃料にしている。学校、ホテルなどにもボイラーを入れている。今までの燃料費の25%くらいが賄われている。エネルギー活用はどんどんやった方が良い。
現在では、建築物の8階建てくらいは木で作ることができる。実際の建築も始まっている。先ず建築で木を使うことが必要。机も建物も出来るだけ木を使うということが基本。日本は木の国です。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
勝浦の観光振興で何かヒントがあったらお伺いしたい。
観光関係のPFI事業はたくさん検討されている。これからの観光は、ウイズコロナの時代となり、もう一回見直そうなっている。少ない人数で多くお金を使ってもらう仕組みにする。KPIの設定だとか、何でお金を落としてもらえるか。機能見直しを徹底的にやる。観光を生業にしている町、箱根町、指宿とかいろいろなところでやろうとしている。
町おこしのNPO団体の職員として、東京から移住して10年になる。この地域の里山をいかに活用するかをテーマとして活動している。木質活用で炭の活用を考えたい。熱を出しつつも二酸化炭素を減らしていくなどの考えについて聞きたい。
炭は古来から使われている。木を使っての燃料は20万年前から。化石燃料は300年しかない。使い勝手のいいのは炭でありエネルギーが凝縮している。くずであれば土壌改良にも使える。
炭を作るのは良い。竹を使って炭を作るのも良い。
そういうものを使いながらチャンスがあれば、森里海の道の駅のようなものがあれば小型のガス化設備をいれながら、温浴施設、足湯やシャワーなどが出来る。
山の木は二酸化炭素の吸収源と言われているが、高齢になった木は逆に二酸化炭素を出すので、適齢期になった木を切り出して有効活用することが大事。
御宿町の人口は7500人くらい。これを回していくのに適正な規模はどれくらいか。
人口規模の大小ではない。厄介なのは昔、人口が大きな町が極端に減少した場合。少なければ少ないなりに役場職員と住民が一緒に自分の町を作ればよい。7000人はちょっと難しい規模かと思うが、町の規模に応じてどのように作っていくかを考える。外には回答がない。自分たちで作るということだと思う。
いすみ市でも竹炭や様々な取り組みがある。行政が民間の方に追いかけられている等、民間力が強いと感じている。個々の市町だけで解決するのではなく、このように夷隅郡市全体で取り組んでいけることも或ると思うので、2市2町が連携して取り組んでいければよいと思う。
とても未来を創造できるような話があり、わくわくした。PPPなどは、以前から研修会などに参加していたが、自治体として実施できていない。これを市役所などでやれる方法があったら教えていただきたい。
法律ができた頃のガイドラインはやる気をなくすようなものだったが、それから見れば今は、かなり楽にできるようになった。市役所の職員さんたちも社会実験のような形でやってみる。座学をいくらやってもまえに進まない。オンザジョブで民と公の方が一緒に仕事ができるような案件を出して、民間の意見を公共の仕事に生かせるような発注方式を試してみるのが良いのではないか。

勝浦循環型社会シンポジウム

 
最後に、御宿町長、勝浦市長からまとめの言葉をいただきました。御宿の石田町長は、リサイクル、公民連携、バイオマスエネルギーなど循環型社会への転換は、ごみを廃棄物ではなく資源だと認識できれば可能となる。未来の素晴らしい施設づくりを勉強したいとお話しされました。
勝浦の土屋市長は、今日のシンポジウムで人口15,800人という現実をもとに見直すということ、いままでは計画は役所がやり実効だけ市民にお願いしたが、これからは計画、実行、チェックをすべて市民と一緒にやりたいとお話しされました。
高澤代表の閉会挨拶でシンポジウムは終了しました。
 
新型コロナ感染対策で定員を半分以下に絞ったため、希望者全員に参加していただけず、シンポジウムの内容が充実していただけに残念でした。ご登壇いただいた皆さま並びにご参加の皆さまへ感謝申し上げます。
 
■問合せ・連絡先
ちば里山・バイオマス協議会(ちば協)
〒290-0056 千葉県市原市五井2437-2 3F
E-mail:mail@chibakyo.net

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA