ちば里山・バイオマス協議会(ちば協)

2月3日「森は海の恋人」地域資源活用シンポジウム in勝浦を開催しました

 ちば里山・バイオマス協議会は、2月3日(土)午後、「『森は海の恋人』地域資源活用シンポジウム in勝浦 ~森林の再生による漁業資源の再生と 里山・里海のめぐみ生かした産業と観光の振興を!」を開催しました。
 イベント案内ページへ
 

勝浦シンポジウム

 シンポジウムは、平成29年度中央ろうきん助成プログラムの「ちば里山保全・事業化支援活動のリーダー養成」事業の「ちば塾 第6回」として実施したものです。
 会場の勝浦市芸術文化交流センター(キュステ)には、勝浦市と周辺市町村に加えて千葉県外から、約130名の参加者が集まり、講演とパネルディスカッションが行われました。

勝浦シンポジウム

 ちば里山・バイオマス協議会(ちば協)共同代表の高澤真の司会により、ちば協幹事の鈴木克己から開会挨拶がありました。
 続いて、勝浦市の猿田寿男市長から来賓挨拶がありました。猿田市長は、「このシンポジウムで、田中克 京都大学教授からから多くのことを学ばせていただきたい。先生が提唱されている『森里海連環学』は、山の恵みが海の恵みとなって漁業再生と環境保全につながるということだが、市民の皆様と一緒に地域の自然と産業を再生し、まちづくりを進めていきたい」とお話しされました。

勝浦シンポジウム

 

 
 第1部は、NPO法人森は海の恋人 理事・京都大学名誉教授の田中克(まさる)氏により、「森里海を結び、心豊かに暮らせる未来を!」のテーマで基調講演が行われました。

勝浦シンポジウム

 田中氏は、「地域から日本を変えようとの取組みが行われている。1989年に始まった『森は海の恋人運動』、2003年に提唱された『森里連環学』、そしてその流れの上に環境省が2014年に本腰をいれて立ち上げた『つなげよう、支えよう森里川海プロジェクト」がつながった。これからの10年がこの流れを本流にできるかどうかの極めて重要な時期。経済最優先の社会から心の豊かさへ。私たちにも深く関わり、人と人が多様につながりながら地域社会の中で生きていくなかで醸成されるように思う。
 物を大量に生産し大量に消費する(それは大量廃棄を伴う)物質文明を機軸にした近代社会が大転換を迎えている。これまでの目先の経済成長と明日の暮らしの利便性を求めることにより断ち切り続けてきた多様なつながりを再生する時代の到来だ。すべてのいのちの源である水はつながりと循環の象徴といえる。
 小さな取り組みを紡ぎながら、人と自然、人と人を紡ぎながら総合的な力を蓄えていくことこそ大事である。またいつかお会いしましょう」などとお話しされました。
田中克氏の講演資料と、シンポジウム活動報告もご参照ください。)
 

勝浦シンポジウム

 
 第2部は、「森里海を結ぶ地域資源の活用と再生による元気な地域づくりめざして」のテーマで、パネルディスカッションが行われました。
 パネリストは、田中氏のほか、勝浦市 猿田市長、勝浦漁業協同組合の石井春人代表理事組合長、新勝浦市漁業協同組合の渡邉幸治代表理事組合長、一般社団法人勝浦市観光協会の渡邊幸男会長、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク副理事長・NPO法人農都会議理事の竹林征雄氏、一般社団法人国土政策研究会の小浪博英専務理事の6名でした。
 モデレ―ターは鈴木幹事が務めました。
 

勝浦シンポジウム

 パネルディスカッションでは、各パネリストから意見の発表があり、フロアの参加者からの発言もありました。
 竹林氏は、「バイオマスに焦点を当てると、身近にある生ゴミや糞尿から膨大なエネルギーがとれる。勝浦市の山林は5,800haあり、エネルギー源として活用していないことは勿体ないことだ。この市にある山林資源を活用すれば大きな産業となり得る。産業になれば雇用も創出される。みんなで意識を変えていかなければならない」などとお話しされました。

 小浪氏は、「勝浦市は、海と魚と思っていたら山国だ。御宿から来るとトンネルが多い。森と海はあるが里がない。この山と海をどう活かすのか。7つの漁港を巡るためには、郊外に駐車場を作ってバスなどで巡回できる環境があるといい。千葉県の海産資源をどう活かすのか、人口流入の分析をして、しっかり調べて伸ばしていけば人口も増えてくるのではないか」などとお話しされました。
 

勝浦シンポジウム

勝浦シンポジウム

 地元の観光協会長と漁協組合長の方々は、「町の力をつけるのは観光はかかせない。勝浦市の自然を味わってもらいたい。勝浦に来たら、伊勢エビやカツオを是非味わってもらいたい。綺麗さを求めるだけではなく、自然の環境で過ごしやすい地域づくりをしていきたい」や、
 「人口が減り若者が減っている影響もありカツオ船も減少している。地元の漁業者も年々減って来ているが、嬉しいことに自分から漁師になりたいと漁業者になった若者がいる。漁師が減れば魚屋も減って来る。日本全国の方に本物のカツオを食べてもらいたい。この時期のカジキは絶品だ」、
 「森から流れる贈り物は水産業の人間として見守って行きたい。新勝浦漁協は、地域基幹産業でもある家族経営型の漁業者の集まり。平成2年に7漁協が合併して作られた。現在の組合員数は580名程。クロマグロの資源枯渇化により勝浦地域も操業自粛も余儀なくされている。体験など様々なことに取組んでいき、組合も変わっていく。組合員減少についてはオープンに議論する」などのお話をされました。
 

勝浦シンポジウム

 質疑応答に続いて、地元の協力団体などの方々がフロアから、「田中先生が“里は人”と仰ったが、これからの地域のキーはヒトと思う」、「興津湾のクサフグの産卵を子どもたちに見せるイベントを行っている。漁船遊覧などまだまだやりたいことがある。私の夢は“海のこどもの国”を作ること」、「竹パウダーで土壌改良剤を作り美味しいお米を作っている」、「豊岡から野田へ、そしていすみまでコウノトリが飛んできた。環境を守ることが経済活性化へつながる」などの意見を出されました。

 田中氏は、「気仙沼では、カツオの一本釣りが基本。カタクチイワシを餌としてカツオの一本釣りをしているが、森と川のつながりの賜物だ。お金や便利さの価値観でものごとを解決しがちだが、環境を考えると“本物”が大事」などのお話もされました。
 また、竹林氏は、「森林環境税の金は直接、市町村に分配される。森林面積率と人口によって分配の率が決まる。今後、山には手が入り良くなっていくであろう」とお話しされました。
(各登壇者の発言の概要は、シンポジウム活動報告をご参照ください。)
 

勝浦シンポジウム

 
 伊藤幹雄幹事の閉会挨拶でシンポジウムは終了しました。
 ちば協が活動の範囲としている千葉県の内房の里山地域、長生郡や夷隅郡など県央地域、外房地域は、第1次産業と観光関連業が中心となっていますが、後継者の問題を含めてさまざまな課題を抱えています。今回のシンポジウムが、持続可能な地域づくりに向けて細やかでも一つのきっかけとなればと期待します。リーダー養成事業の研修生にとっても、良い勉強の機会になったのではと思います。
 ご登壇いただいた皆さま並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
 
(参考資料)
田中克氏の講演資料(PDF)
竹林征雄氏のプレゼン資料(PDF)
シンポジウム活動報告(PDF)
 
(追記)
 御宿町、勝浦市の地元の方々の要望・期待に応えて外房で2回の「森は海の恋人」をテーマとしたシンポジウムを行いました。参加者集めや当日の応援などを地元の方々に支援していただき、おかげさまで里山の地域資源を活用した事業化のリーダー育成という本事業の目的を遂行することが出来ました。中央ろうきんの助成額から大幅に予算オーバーしてしまいましたが、それらは、当会の会員や、スタッフのボランティアによって支えられたものです。あらためて感謝いたします。
 
■問合せ・連絡先
 ちば里山・バイオマス協議会(ちば協)
  〒290-0056 千葉県市原市五井2437-2 3F
  E-mail:mail@chibakyo.net

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA